最悪の事態

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「時間がない。急げ」 課長に手首を掴まれて、部屋の中に入れられた。 「は? 急ぐんですか?」 ーーーどうして、私が急いで課長の家で蕎麦を茹でることになるわけ? 課長の家は、私の家と間取りが全く同じだった。片付け上手なのか、散らかってる感が無い。だからと言って、病的に綺麗好きということでもないようだ。 適当に居心地よく感じる空間だ。 ーーーだれかが来て片付けてんのかなぁ。 「山田、鍋とザル用意しておいた。あとは、キッチンタイマーだな?」 「え、時間計ります?」 「当たり前だろ。料理をするときに、お前は時間を計らないのか?」 「はい。だって時間にしばられるのは好きじゃなくて」 仕方なく乾麺の袋をテーブルに置いて、鍋に水を入れ始める。 「しばられるとかの問題じゃないだろ。いかに上手く茹でられるかだろ」 「勘で結構いけますけどね」 鍋を火にかけようとして、見た目も素敵なIHクッキングヒーターに見入ってしまう。 ーーー手入れも楽そう。 「山田、手を動かせ。仮にも食品メーカーの社員が勘だと? 料理の達人にでもなったつもりか? 勘に頼るな。数字をなんだと思ってる」 ーーーやだ、また説教なの? 最悪。
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