ひとりのおふろ

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「ねぇ、ケロちゃん。桃香はどうしたのかな? 二人だけだと寂しいよね……」  目のところに水滴が付いたケロちゃんは、なんだか泣いているように見える。  あの後、しばらくは良く眠れない日が続いた。それがいつの間にかなくなって怖さを感じなくなった時、自分は大人になったのだろうか?   いや、自分の過去などどうでも良い。今の問題は桃香のことだ。今日のことを夫に相談すべきか否か……。  考えに行き詰まり、気分を変えようと入浴剤を入れたプラスチックのバスケットへ手を伸ばした郁美は、なにか物音がしたような気がしてふと動きを止めた。  気のせいだっただろうか? そう思い始めた数秒後、浴室の引き戸が遠慮がちに開かれ、桃香が顔を覗かせる。 「ねぇ、ママ……やっぱり一緒に入ってもいい?」  その様子があまりにいじらしくて、郁美は破顔するしかなかった。 「もちろん!」  輝いた笑顔と同時にガラッと引き戸が開かれ、桃香がざぶんと湯船に飛び込む。勢い良くはねたお湯に二人は歓声を上げた。ケロちゃんも激しい潮流に身を任せながら笑っている。
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