第1話【奇跡のちから】

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それは、とても寒い日の夜でした。 日本全国的に雪が降り交通網はマヒ、外を出歩く人は少なく、よほどの事情でもない限り外出を控える人が大半です。 だけど、その余程の事情で困っている家族がいました。 父親と母親と娘、そしてペットの犬の三人と一匹の平和な家族でしたが、最近ペットの犬が元気が無かったのです。 そして、その寒い冬の夜。 ペットの犬のポメラニアンの容態は急変しました。 『パパ!ママ!ワンダが....ワンダが....』 娘がペットの犬(ワンダ)の傍らで泣いています。 本来ならパパの車で救急の獣医の元に連れていくところなのですが、急に雪が振りだしたものだから車で外出するには危険過ぎました。 それに、パパとママはある種諦めた表情でいたのです。 ペットのワンダは15歳で犬としてはかなりの高齢で、今回の体調不良は老衰から来ているのが解っていたから。 「明日、暖かくなったら病院に連れていくから今日はお休みなさい?」 娘はワンダを抱き上げました。 「今日は一緒に寝る。」 娘はワンダを自分の部屋のベットに寝かせたら、隣に寄り添う様に横になった。 ワンダは次第に呼吸が荒くなりとても苦しそうです。 「ワンダ....お願いだから死なないで....」 娘は悲しくて涙が止まりません。 だけどワンダは娘が泣いているの見て、弱った力を振り絞り娘の顔をペロペロ舐めた。 まるでワンダが「私は大丈夫だから」とささやいているかの様です。 泣き疲れた娘はいつしか眠っていた。 そして隣に寝ていたワンダは夜が明けるのを待たずに身体は冷たくなっていました。 雪はまだ降り続いている。 一晩中降り続いている。 人びとは気付いていなかった。 降っている白い雪に混じり、七色に輝く雪が混ざっている事を.... 七色の雪の一粒は娘の部屋の窓をすり抜けて冷たい亡骸になったワンダに吸い込まれました。 するとワンダの身体は再び暖かみを取り戻したのでした。
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