第9章 「冬休み編」

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 過去形ということは、実施できていないということです。  ということはもしかして……。 「結論から言おう。"顔なし"には逃げられた。しかも向かわせた騎士全てを失うという最悪の形で、だ」 「な……」  私は絶句しました。  あの時の意味深な台詞も、助けが来ると想定していたから出た言葉ということですか。    公王は言葉を続けました。 「騎士たちの死因には不思議な点があった。それはお互いがお互いの異能で殺しあったかのような傷が身体に残されていたことだ」 「お互いがお互いの異能で? 同じ近衛騎士団員同士でそんなことをするなど考えられませんね。それではまるで誰かに操られているようでは――まさか!」  先ほどのシモンズの証言とあまりにも酷似する現象です。  だとするなら、今回の事件を起こした黒幕は――。 「そうだ、"薔薇十字団"が関係している可能性が非常に高い」  何故かは分かりません。  ですが、これだけ似ているということは公王が言っていることが誤りだとは思えません。    "薔薇十字団"――リーゼロッテの時といい、そして今回のミシェルといい、私の大切な者を傷つけようというのであれば、いいでしょう。  相手が誰であろうと、どんなことがあろうとも、私は私の持てる全てを用いて必ず守ってみせます。  そう、心に誓うのでした。
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