僕が死んだ日

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転げ回った時に突き刺さっていたのか、枝が太ももから生えていた。 体液がダラダラと流れ出ている傷口を押さえつけて、足を引きずるようにしながら森の中を駆け抜けた。 ───────────────────── 許さない許さない許さない許さない許さない許さない! あの触覚の獲物だけは絶対に許さない。腕を刺された、目を刺されて見えなくなった。 忌々(いまいま)しい。獲物は獲物らしく、泣き叫んで命乞いでもしていればいいのだ。 それが反撃し、あまつさえ逃げられた。 だが、それも大した問題ではない。 視線を下げて見ればあの獲物が通った道、その痕跡が点々と続いているではないか。 猿は獲物が残していった体液の道しるべを眺めて、内心ほくそ笑んだ。 やはり獲物は(おろ)かだ。 反撃されて少々(おどろ)きはしたが、なんて事はない。こんなわかりやすい目印を残していくようなヤツが自分よりも賢い訳などないのだ。 見つけたらどうしてやろう。 まずは刺された腕と目の復讐をしてやらなければなるまい。 とりあえずは両手両足を枝のようにへし折って、片目を木の実のように潰してやろう。そして、アイツの目の前でもぎ取った手足をバリバリ(むさぼ)り食ってやるのだ。 これからがお楽しみだ。 獲物の反応がいくつも別れて、実に面白い。これが楽しいから狩りはやめられない。 そう、生きる為に食らうという目的以外の狩りは。
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