僕が死んだ日

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ようするにヤツは遊んでいるのだ。 恐れて震えて逃げ回る誰かを見て楽しんでいるのだ。 それはまるで子猫がカマキリを死なない程度に叩いて踏んで、玩具にでもするかのように。 当然だ。ヤツから見れば自分はまさしく虫ケラそのものだろう。 叩いて踏んでつまんで、少々 遊んでいれば簡単に壊れてつぶれて千切れてしまう。 そんな程度のモノなのだ。 で? "それがなんだ" 次の瞬間。握り固めた拳から針が伸ばし、こちらへと伸びてきた猿の手首にアッパーの如く下から突き立てた。 「ギャアッ!?」 知ったことか! 針を引き抜くと素早く猿の懐へと飛び込んだ。 リーチが長いという事は強力な利点であると同時に、超近距離において小回りが効かないという事でもある。 さっきまで(かろ)んじていた相手に予想外の反撃をされて完全に面食らった猿は、刺された腕の痛みに暴れるばかりで 無防備だ。 無秩序に振り回される腕の合間をすり抜け、猿の顔面に針の突きだした右拳を叩きこんだ。 「ギャアアアアアアアア!?」 針は猿の左目に突き刺さった。 このまま針を押し込んで脳を掻き回してやるつもりだったが、猿の対応のほうが1歩 速かった。 更に体重をかけようとした時には、猿の拳は脇腹にめり込んでいた。 「がぁ!」 そのままゴムボールのように弾き飛ばされ地面を転がり回る。 全身をまんべんなく打ち付けたようで、身体がギシギシと痛むが無理矢理に立ち上がって走り出す。
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