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4-③ その姿に覚えあり!
「はい、大瀬良です……」
大瀬良さんは、落ち着いた声で電話に出る。
うまく詐欺師を騙せるだろうか。
「はい、はい。あの、銀行の機械のところにおりますよ。……ええ。……ハア、それがその、実はやっぱりやり方が分かりませんで……はい。……いや、そのう……」
大瀬良さんは、うまく芝居を続けている。
その様子を、だれもが固唾を飲んで見守った。
「いや、やっぱり機械はよく分かりませんわ。わたし、あなたみたいに若くないからサッサッサとできなくてね、年を取るっていやねえ、オホホ……」
若干わざとらしく、大瀬良さんは笑った。
しかしいまのところ、うまく演技ができているように見える。
(演劇をかじってたって、ホントかなぁ)
冗談のような気もするし、本当のような気もする。
とにかく吟子は大瀬良さんを見守った。
そして。
大瀬良さんは、言った。
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