唸れ! 香港スピン!

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唸れ! 香港スピン!

「フーハッハァッ! 口ほどにもないなあ、ケンドーレッド! 弱い、弱すぎるぞ!」  廃工場にとどろく哄笑の主は、幽霊星団ゴースターの幹部ジャーク・マドー。黒の道着に身を包み、ドクロ意匠の仮面で顔を覆った巨漢は、二ヶ月前の放送より登場した怪人だ。全国の未就学児を震え上がらせる一方で、アクターによる本場仕込みのジークンドーとベテラン声優の低音を効かせた重厚な演技が大人の視聴者の心をつかんで離さない。  満身創痍の正義の味方、スターバスターズ。ケンドーレッド、カラテグリーン、キュードーピンク、ジュードーブラック。このまま彼らはなすすべもなく全滅し、地球は星の亡霊ゴースターたちの手に落ちてしまうのか。いや、子供たちは、特撮ファンは知っている。スターバスターズは四人ではないことを。あと一人、彼女が残っていることを。 「そこまでよ! ジャーク・マドー!」  凛とした声が工場の入り口より響く。 「むっ! 貴様は!」  振り向くマドー。視線の先にはスカイブルーのチャイナドレスに身を包んだ細身の少女。 「私を忘れてもらったら困るわね」 「フッフッフ! カンフーブルー真紀ユリナ。忘れてなどおらぬ。こうしてあいまみえる時を楽しみにしておったわ」  ユリナは表情ひとつ変えず、お馴染みの決めポーズをとる。そして、名乗りを上げた。 「滅び認めず悪と堕し惑いし星を無に帰す! 青龍の戦士カンフーブルー、ここに推参!」
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