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そして、始まった試合。 始まるときには、テレビの前で、私は無意識に正座をしていた。 彼の気迫と美しさが、そうさせていたのだと思う。 ショパンのピアノ曲「バラード第1番」の美しい旋律。 冒頭。鮮やかな4回転サルコーが決まった。 負傷の影響は…と心配して見守る、会場の、ファンと、テレビの前のファンの不安をいきなり一掃した。  ショパンのピアノ曲「バラード第1番」の美しい旋律に、滑る喜びを全身で表現し、息をのむほどの華麗な滑りで、会場のファンを魅了した。 得点が1・1倍となる演技後半のジャンプ2本も完璧にした。 全てが右足での着氷。右足首の負傷明けとはみじんも感じさせない。最後はカッと目を見開いて演技を終え、瀬戸際の状態で“ぶっつけ本番”を迎えたとは思えない素晴らしい演技だった。
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