古民家レストラン

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思わず笑みがこぼれる。 お洒落な店で昼間から贅沢して、友達と幸せを共有して、日頃追われ続ける仕事やそれに伴う人間関係などに疲弊し硬くなった感情をほぐして、活力を充電していく。時園は今まさに始まる素敵な時間に、ときめいていた。 オリーブオイルの香りが心地いい。頬張った里芋の甘みとガーリックのアクセントが口の中で踊る。そして、その柔らかそうな塊を噛んで……。 異様な歯応えを感じた。 それは里芋の柔らかな食感というよりは、もっと弾力のある何か別の物のような感じ。 でも、人気のあるお店だから、考えすぎかもしれない。 時園は、特に深く疑念を持つことはせず、その違和感を無視する。そのまま、弾力ある里芋を噛んで、力を入れた。 ガリッ。 フォークが手から落ちた。キンとなった金属音が、時園の呻き声をかき消す。何が起きたのかわからなかった。ただ口の中が燃えるように痛い。時園は激痛のあまり、食べていたものをすぐに吐き出し、悲痛なまでに呻き声を上げた。それでも、痛みは止まらなかった。助けを呼びたかった。声が出せなかった。呼吸すら上手くできず、涙が零れた。 幸いしたのは、隣の友達がまだ酷くなかったことだった。時園と同じように里芋のソテーを吐き出した彼女は、すぐに店員を呼ぶ。店員は時園たちの異常に対し、すぐさま救急車を呼んだ。 救急車に運ばれている間もずっと口内の激痛は収まることはなかった。
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