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「なら、雑魚どもは俺が片付けといてやる」
師匠がサポートについてくれるなど、恐れ多いと思ったと同時に、これほど心強いものはないと感じた。
必ずやり遂げてみせる。
冬弥の決意を悟った龍月は、にやりと笑い、数珠を持つ手をさっと払った。
夕陽の光りをはじくように、一点の濁りも曇りもない水晶がきらりときらめく。
しなやかな指に数珠を絡ませ、緋鷹龍月は手を合わせた。
その姿は無防備のように見えて、まったく隙がない。
まぶたを閉ざし、経を唱える師匠の顔に残照の影が落ちる。
端整な顔立ちはさすが世間で騒がれるだけあって美しい。男の冬弥ですら緋鷹龍月の姿に見とれてしまった。
見てくれではなく、何より師匠の魂が美しいと思った。
まるで心が洗われていくようで。
ふと、頬に熱い雫が落ちたことに気づく。
涙……。
こんなときに泣くなんて、と涙でかすむ目を袖口で拭い再び師匠に視線を戻した時。
経を唱える師匠の足元から緩やかな風が舞い上がり、師匠の衣服の裾が髪が、手にしていた数珠が大きくなびくように揺れた。
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