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ひまつぶし しりとり
北海道の春は遅い。
毎年GWの頃に各地で桜の開花宣言が漸く聞かれる。
私の住むこの街の観光名所の一つでもある星型の大きな公園でも、徐々にピンクの縁取りがなされて、隣接するタワーから見ると満開の時には息を飲むほど美しい。
この時期はライトアップもされ、夜もお花見が出来る。
私の勤める会社もそれに漏れる事なく今夜はお花見。
その場所取りに私はもう一人、その彼と桜の木の下に敷いたブルーシートの上で何も会話する事なく先程からここに居る。
二人の頭上には八分咲きのソメイヨシノ。
「暇だな」
「……そ、そうだね」
なるべく二人きりになる状況を避けてきたというのに。
この仕打ちは何なのだろう。
……気まずい。
気まずい事この上ない。
彼が私の勤める会社の新入社員として紹介されたときには、正直心臓が止まるかと思った。
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