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白と黒
「お兄さん、こりゃあ聖職者向けのブレスレットですよ」
ウラウが勘定台に置いた青銅の腕輪を見て、魔法具店の店主は困った笑みを浮かべた。
「ご覧ください。ここに魔法石がひとつはまっているでしょう? この石の力と、腕輪にあしらわれた聖なる文様が、つけた方の白魔力を高める作用をするのです……。えーっと、そうですねえ、例えば治癒魔法なら……」
店主の説明を聞き、黙って頷いているウラウ。
だが、もちろん彼はこの魔法具がどのようなものかをよくよく承知していた。
ウラウも元はといえば、まがりなりにも聖都の修道士だったのだ。修行を十分におさめていないため、高度な白魔術を使うことはできないが、魔法具の力を借りれば大抵の傷は問題なく治すことができる。
旅の途中に二人のどちらかが負傷するかもしれないことを想定し、魔法具は必需品だとウラウは判断したのであった。
――ウラウは店主の言葉を遮って言った。
「もちろん、私が使うわけではありませんよ。親戚に聖職者がいるので、これはその人にプレゼントしようかなと思って……」
微笑みながら、ウラウは硬貨をカウンターの上に差し出す。そして店主が小銭に目を落とした瞬間、顔をしかめてもう一方の手をすっと喉元に当てた。
……畜生。嘘をついて悪かったな!
首輪が熱を帯び始めたのを感じ、ウラウは心の中で毒づく。この程度の罪なら全身が毛深くなるくらいだが、それでも体中がチクチクと痛むのだ……。
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