寒空の下、満開の桜

「私も連れてって」

　ファミレスでの、トキのあの顔は、今思い出しても笑える。

　お互い自己紹介した時、二人とも名字が高田だと知った時、私がトキをからかったのだ。

「じゃあ、結婚しても、名字変わらないね」

　あの時のトキの慌てよう。

　可愛いなって思った。
　二回りも違うのにね。

　初デートをした日には、私はもう二十歳になっていた。
　トキは四十九歳。ギリギリ四十代だった。

　それから一年後、新潟県出身だったトキから告げられた。

　友達から、起業する会社の手伝いを頼まれたから、地元に帰ると。

　年齢を気にして、自分から切り出せない彼に業をにやした私は、言ってやった。
「私も連れてって」と。