戦さ場

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此処は戦さ場 真っ暗な闇 俺は刀を抜き、佇む 敵が来る!! 緩やかな丘を突っ走る 足元に転がる無数の死体 味方の兵の死体 敵方の死体 踏みながら懸命に走る 足の裏に、腐肉の不気味な感触 耳に、骨が砕ける鈍い音 踏んだ死体が呻く 何故だ なぜ我らが死なねばならぬ 何故だ なぜ我らを撫で斬りにした なぜお前だけが生きている! 轟々と渦を巻き、俺を巻き込む 何故と訊くか? 殺らねば、兵が殺られる 殺らねば、民が殺られる 殺らねば、俺が殺られる 殺らねば、国が滅ぶ! 目を血走らせ、走る 走る度、死体の山の血溜まりの血が飛び、鎧を赤黒く染める 後方から迫る敵兵 「大将がいるぞ!首を獲れ!!」 声が響く 前を見やる 丘の頂きに一本の桜の大木 あそこまで走らねば! あの桜の木まで! なのに足が一向に進まない 泥土が重く絡みつく 泥土では無い 泥々とした血溜まりの中、 無数の赤黒い手が脚を掴んでいる 「伊達政宗だ!!」 近付いた敵兵の1人が叫んだ 「斬れー!! 首を獲れぃ!!」 「うおおおーっ!!」 俺と認識した途端、兵達の轟音の如き唸り声が一帯に響いた 足を掴む手に刀を突き刺す 何度も何度も突き刺す 突き刺しても、血まみれの無数の手は俺を放さない 「来やがれ!」 振り向き、斬り掛かってきた敵兵に刀を振るう 喉元に突き刺し、倒す 別の敵兵にも突き刺す バタバタと倒れていく それでも何処からか湧いてきたかのように、多数の兵が襲い掛かる 足が自由にならないまま、斬り付けた 斬っても群がる兵ら 俺の腕を掴み、身体にしがみつき、身動き出来なくなる 「首だ!首を斬れー!」 群がる兵らは、俺の頭を押さえ付け、首を狙う 刀が首に当たる 敵兵の重みで押し潰されそうだ 死ね…死ね…死ね… 足に絡みつく手が呪いの言葉を吐く 懸命に振り解こうとするが、びくともしない
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