絶対的支配のNOIR13

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 壁に押し付けられたまま腕を捕られ、服を引き裂かれたおぼつかない格好のままで唇を塞がれた。信じ難い告白と、突然に降って湧いたような都合のよい現実を受け止める余裕などなかった。欲情も吹き飛ぶような衝撃に翻弄されながら、帝斗の頭の中は真っ白で、到底何をも考えられる状態ではなかった。 ――日本で自身の帰りを待つ剛のことも、 ――今しがたの信じられないような告白も、  何もかもが夢幻のようで、帝斗は朧気に瞳を漂わせたまま、強引な腕の中で意識を手放した。 ◇    ◇    ◇  永い間密かに想っていた男に強引な形で奪われて、幸か不幸か彼の傍で過ごすこと半年余りが経った頃、帝斗は既に薄れゆく剛との蜜月の記憶をすっかりと忘れかけていた。  仕事の都合で日本に帰らなければならない用事ができた頭領白夜に連れられて帰国した自らに、どんな運命が待ち受けているのかということも当然のことながら想像し得ないまま―― 「どうした?」  香港の上空へと飛び立ったばかりの機上から、ぼんやりと眼下を眺めていた窓越しに映った白夜にそう声を掛けられて、帝斗はハッと我に返った。 「何も心配することはない。用が済めばすぐにまた此処へ帰って来るんだ」  日本へ行くことで何を気重に感じているのか、薄々気が付いているふうな白夜の台詞に慌てて首を振る。 「別に心配なんて……僕は何も……」 「それならいい」
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