もっと一緒にいたいのに。

11/34
250人が本棚に入れています
本棚に追加
/248ページ
上向けられた手のひらを見つめて困惑するわたしに。 「佐藤さん。はい」 そうちゃんはもう一度、わたしを見て言った。 ……これは、手を、多分、手を出してってこと、だよね。 震える右手をそっと持ち上げる。 意を決してそうちゃんの手のひらにのせると、どうやらそれで間違っていなかったらしい。 一つ頷いたそうちゃんの、わたしを段差から降ろした節の高い指は、すぐに離れた。 指先に妙に空気を感じる。 少し冷たいような気がするのは、触れたところに熱が集まっているせいだ。 「佐藤さん。行こう」 わたしを呼ぶそうちゃんに、反射でうんと返してはっとする。 そうだ。 そうだった。 ……わたし。 わたし、昨夜、目標を決めた。 手をつなぎたいって言うって、決めた。 言うタイミングを考えていたけど、もし言うなら、今じゃ、ないのかな。 ううん。 きっと、絶対絶対、今に、決まってる。 震える唇を開く。 「佐藤くん」 あの。 「手、つないでも、いい?」
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!