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上向けられた手のひらを見つめて困惑するわたしに。
「佐藤さん。はい」
そうちゃんはもう一度、わたしを見て言った。
……これは、手を、多分、手を出してってこと、だよね。
震える右手をそっと持ち上げる。
意を決してそうちゃんの手のひらにのせると、どうやらそれで間違っていなかったらしい。
一つ頷いたそうちゃんの、わたしを段差から降ろした節の高い指は、すぐに離れた。
指先に妙に空気を感じる。
少し冷たいような気がするのは、触れたところに熱が集まっているせいだ。
「佐藤さん。行こう」
わたしを呼ぶそうちゃんに、反射でうんと返してはっとする。
そうだ。
そうだった。
……わたし。
わたし、昨夜、目標を決めた。
手をつなぎたいって言うって、決めた。
言うタイミングを考えていたけど、もし言うなら、今じゃ、ないのかな。
ううん。
きっと、絶対絶対、今に、決まってる。
震える唇を開く。
「佐藤くん」
あの。
「手、つないでも、いい?」
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