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ストーカー
母親がフランス人で、見た目は日本人だが、名前は海外の物そのもの。
私、アンナ ヒル(29)は部屋でくつろいで携帯片手に音楽を聴いていた。
カリカリッと壁を擦る音がする。
広範囲の、ネズミじゃないでかい体が擦る音。
「!!」
私は鳥肌を立たせて、飛び起きる。
そして、今度は窓側に人を感じた。
黒い168cmの影。
すぐ、窓側を睨むが誰もいない。
息を荒くして、瞬きをする。
瞬きをする瞬間、一瞬暗くなった世界に、デカイ男の顔が現れた。
目の前で、私を見ている。
ーーーまただ...また。
私は一旦、逃げる様に家を出て、用もないのに、庭をふらふらなんて、できやしない、近所の人に変に思われない様、ポストへ向かう。
私は最近、誰かに見られてる気がしてならないのだ。
その誰かは知り合いに、酷く似ている。
そして、生きている。
奴は私よりリア充だし、私に纏わりつく必要などない。
ふと、ポスト横の、門に黒いものが見えた気がした。
あれ?ウチの門に人が立ってる。
用があるなら、声をかけてくれば良いのに。
黒いウールのロングコートを着て、キレイ目な白いシャツに、カチっと着揃えたデニム、ピカピカの茶色の革靴。
黒い、工場勤務さながらの短い清潔な髪、薄っぺらい笑顔。
そいつはニタっと、笑う、生きている、生身の人間。
さっきから私が怖がっていた、誰かの正体、神楽坂 瞬。
見た目はイケメンだが、中身は知れば知るほどヤバイ悪魔。
「神楽坂さん...転勤になりましたよね?
なんでこの街にいるんです」
私は真っ白な頭で、聞いてみる。
神楽坂は、見つかるつもりは無かったらしい。
笑顔を気まずそうに歪めて、今更顔を覆い、逃げ出した。
それで、推理の糸がつながった。
アイツ、70キロ離れた転勤先の街から、わざわざウチを見に来たのだ...。
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