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 ダメだと呼び戻そうとして、毛むくじゃらに呼びかける名前がないと思った。  なんて呼べば毛むくじゃらがこっちに戻ってきてくれるのかわからなくてためらって。    私はあいつを呼んだことなんてなかったんだ。  毛むくじゃらに名前なんてつけようと思ったことなんてなかったんだと、飲み込まれていくあいつをみながら、あらためてそう気がついた。  どうして名前のひとつもつけようとしなかったのか。  ずっとそばにいたのに。    唐突に襲ってきた後悔は私を動けなくさせ、毛むくじゃらが飲み込まれていった小山の裾あたりから目を離せなくさせた。  小山は私にはまだ多分気付いていない。こちらに動いてきていない。  昨日は気がつかなかったが、鏡越しではなく直接その姿を見ると、少し半透明の部分があるようだった。  小山自身は動いていないのにその半透明な部分にもぞもぞと動く影があって。  毛むくじゃらが飲み込まれていった向こう側からすぽんと飛び出ていく姿が見えて。  え。  ――通り抜けただけ……?  せっかく気づかれていなかったのに、私の足は勝手に小山のすぐそばを走り抜け、よたよたと千鳥足になってる毛むくじゃらを拾い上げ、公園を飛び出した。  賢いとは思っていなかったけどこんなに馬鹿だったとも思ってなかった。     
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