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もしこれがホラー映画の映像ならきっとさぞかしおぞましいものだと思うのに。
職場では一日邪魔でしょうがなかった。
さすがに机の上やらに乗ろうとはしなかったが足元で寝転がっては机の下をのぞきこみ、私と患者さんの間に割り込んで十円玉と一円玉を入れ替えようとしてみたりとやりたい放題だった。
いつも通り。
仕事が終わるころにはまた一回り大きくなって、西沢さんよりも背が高くなっていた。
西沢さんの手の甲にいたいそぎんちゃくも、倍ほどに触手を伸ばして今は腕全体を覆ってしまっていたけれど、毛むくじゃらはそれに手を伸ばそうとしなかった。
着替えるために更衣室に向かう途中、自分のサイズ感覚に慣れてないからなのかそれともいつもの通りなのか、私の後に続こうとして防火扉に挟まれていた。着替えて戻るとまだ挟まっていたので開けてドアをくぐり一緒に外に出る。
門とは反対側の職員用駐車場へ続く通路に西沢さんがいた。
「あ、お疲れ様」
西沢さんもいつもどおりに笑う。けれどもついこの間まで私の目に映っていたほどさわやかでもないような気もする。
「今日は調子どう? 昨日すごく顔色悪かったけど」
「少し寝不足だったんで。もう大丈夫です」
「あのね、今日も車できてるんだ」
「そうですか。お疲れ様でした」
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