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2017/02 Sat.
目が覚めたら朝だった。
一度も感じたことのない布団の感触と、どこかで嗅いだことのある匂い。好きな匂い。
頭が痛い……。
――そういえば片桐さんと飲んで……、どうしたんだっけ。
ゆっくりと無意識に目を開ける。と、そこには、
「片桐さん!?」
目の前には会社の先輩がいて、小さく寝息をたてていた。そして自分の手はしっかりと彼女の服を握っている。
「あばぁ!?」
慌てて離した衝撃か、それとも驚いて出た声のせいか、不機嫌そうな声とともに片桐怜衣子は目を覚ました。数瞬の間だけ後輩のアホ面を見つめ、何も言わずに身体を起こす。
「あ、あの、えと、……おはようございます」
「おはよう」
青山湊も追いかけるように身体を起こしつつ、寝起きの頭を高速回転させ、昨日の記憶を呼び覚ます……が、覚えているのは仕事帰りに二人で飲んでいる途中まで。
「あの……ここって……」
ちらちらっと周りを見回す。
たくさんの漫画が詰まった本棚たち。
「片桐さんの、家ですか?」
「……覚えてないの?」
「すみません……。飲んでいる途中から記憶なくて」
「終電逃して、タクシーでうち来たのも覚えてない?」
「はい……。ぁ、タクシー代ちゃんと払いますから! あと夕飯のお金も……」
「お金のことはいいけど」
怜衣子は少しだけほっとしたように溜め息をついた。
「私、なにかしました!?」
好きな先輩と一緒で、なにか変なことを言ってはいないか不安になり、思わず怜衣子の細腕を掴みながら聞く。
「なんも」
若干目を反らされた気がし、湊は勢いに任せてぐっと顔を近づけ、「本当ですか!?」と重ねて聞いた。
すると、
「!?」
湊が身を引くくらいに怜衣子が動揺を示して顔を赤くした。
――待って、これ、私なんかやったよね? え?
「なんもないから……。とりあえずあたし今日予定あるから、帰れるのなら帰ってくれる?」
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