第3章 セシル・ティア~儚くも永久の物語り~

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満天の星は、今にも一斉に落ちてしまうのではないかと心配になるくらい、強く、弱く輝き夜空を埋めている。 こんなにも圧倒される星空は今までに見たことがないセシルは、目を大きく見開き、吐息に似た声を漏らした。 「30年に一度だと言うが、30年など、生涯で何度でも迎えられる。」 隣に立つクラウスは大したことがないというように呟き、湿った芝生の上に胡座をかく。 「天使族と魔族は長寿ですが、人間族はその半分もありません。」 セシルは見上げた視線をクラウスに向け、小さく微笑んだ。 天使族、魔族は永遠のような寿命であるが、病気には弱く、そのせいで亡くなる事が多い。 人間族や獣人族は平均寿命、50年から90年である。 セシルは天使族と人間族の混血である。 天使族の特徴としてもっとも分かりやすい艶やかなモカブラウンの髪をしているが、セシルは白銀の髪をしている。 それは何を意味するのか、セシルは何も言わないが友である、トリス、ライルそして今、隣に居るクラウスは気づいているのかもしれない。 「俺が何度でも見せよう。」 「そんなの無茶ですよ。」 そう笑ってセシルも芝生に座る。 「俺を誰だと思っている?」 セシルの顔を覗き込むように顔を寄せ、冷たく微笑む。 クラウスのその笑みは、ノア帝国第一王子という自信に満ちている。 この学園に入学したときに初めて出会った時から変わらないその笑みに、一時はなんて傲慢なのだろうと思ったときもあったが、クラウスを知るごとに、その傲慢さは次期王になるという自信と誇り、そしてそれに劣らぬ高潔たる態度なのだと、セシルは感じた。 王族という立場は同じであるのに、自分は兄様の後ろでお支えし、決して表に出ることはない…。 聖ディーン王国は天使族と人間族が共存する国、短命な人間族を庇護する事で天使族が中心となり治めている。 そしてそれを示す為に、王が天使族の后とは別に、人間族から妃を迎える。 そして産まれた子は生涯伴侶を向かえず生涯を終えなくてはならない。 その理由は天使族と人間族の混血者は病弱でより短命であるため…。 しかし、庶民間では混血者の結婚は許されている。 この子も、また伴侶を持ち、子を授かっている。 元にトリスが人間族と天使族のクォーターだ。 王の子だけは結婚をタブーとされている。 (理由は分かってる王族の中に人間族の血を残さないため...。) その事に誰も疑問に思わない。そうだとしても口には出さない。 母様と私がいなくなれば、王はまた新しい人間族の妃を迎える…。 (国や王に利用されている…。) 「一層クラウスの国に行きたい…。」 セシルは小さく呟いた。
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