第四章:希光

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「兄さん、本当に説得するつもりなの?相手は職業軍人なんだよ?」  格納庫へ向かうエレベーター内でディイスはシェスに問いかけていた。バディとケルーは艦の防衛の詳細を聞くためにまだ艦橋に残っている。 「そのつもりだ。それに、あの人はただ戦っているだけじゃないはずだと思うんだ。頑なにファクターへ乗り換えないのもそれが関係してる気がして…」  シェスの言葉にディイスは大きくため息を吐く。シェスは苛立ちを隠さず「…なんだよ」と言った。 「そう感じるのは勝手だけど、説得で簡単に行くとは思わないよ。撃ってくるなら…」 「そういう短絡的な考えが一番よくねぇよ。分かり合える可能性があるならそれを試さねぇとな」  ディイスは「はいはい…」と流し、二人の間に沈黙の時間が流れる。すると、シェスが口を開いた。 「…生きてサンニアに帰るぞ、ディイス」  突然の言葉にディイスは「…いきなり何?」とシェスを横目で見ながら言う。 「この戦闘…俺たちが死んでも、ガーベッジが落ちても、最悪な結果にしかならないと思ったんだよ。だから、俺たち全員生きてサンニアに帰る。そしたらお前が言ってた学校とかに行かせてもらうぜ」 「学校は民間人が行くところだよ。軍人の僕たちは行けるわけが無いと思うよ?」 「なら、再現だけでもしてもらおうぜ。ウローラ艦長とかキャニー姐さんが先生になってよ」    シェスの提案にディイスは一つ息を吐き「ありがとう、兄さん」と礼を言った。 「僕が不安に思ってるのを察して言ってくれてるんでしょ?どこまで本気かは分からないけど」  この言葉にシェスは少しうろたえる。対するディイスはシェスの方を向き直ると微笑んだ。 「もう大丈夫。帰る場所があるって分かっただけでも気が楽になったよ。一緒にサンニアへ帰ろう」  ディイスが言い終わったと同時にエレベーターが格納庫に到着し、ハッチが開く。そしてディイスは床を蹴り、機体へ向かった。
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