貴方だけの姫になりたい

30/31
265人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ
***** ――ここアマンデス王国には、二人の姫が居る。 正統なる血筋から溢れる気品。そして、周りの人間にも気を配る優しい心の持ち主、エミリア姫。 平民出身でありながら、その知識と手腕で初の王子側近へと登りつめた、公私ともに王子の右腕である、サラ姫。 「姫。私と一緒に踊っていただけますか?」 社交界に出席していた姫は、声をかけられ振り返る。そして、彼女は首を傾げた。 「どちらのことを仰っているのですか?」 サラは貴族に問う。エミリアとサラ、二人の姫が並んでいたからだ。しかし、貴族は戸惑った顔をする。彼が手を差し出したのは、サラだったからだ。だが、彼女はその手を取らない。ふいに違う人物が、彼女たちの名を呼んだ。 「サラ」 「エミリア」 サラはアスタの差し出した手を、エミリアはウィルバートの差し出した手を迷いなく取り、その場を離れる。アスタが意地悪い顔で訊ねた。 「今のは、自分って分かっただろ?サラ」 「エミリア様がいるなら、普通、エミリア様が『姫』でしょ」 「だけど、サラももう立派な姫でしょう?」 エミリアが否定すると、サラは首を振った。 「姫なんて柄じゃありません」 「では、何ならいいんです?」 「そうですね……」 ウィルバートの質問にサラは、少し考え込む。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!