265人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ
ホール中央に立つと、新しく音楽が始まる。アスタの腕の中に入りながら、サラは答えた。
「『アスタの嫁』くらいが関の山でしょうか」
アスタは至極納得したように笑った。
「確かに。それくらいがちょうどいい」
ホールドを組み始めた二人は踊り出す。ウィルバートたちも踊り始めるが、彼はどこか不思議そうな顔で、パートナーであるエミリアに訊ねた。
「どう違うんでしょうか?」
「サラは『王子』と結婚したんじゃなくて、『アスタ』と結婚したと思ってるから」
「なるほど」
ウィルバートが頷く。いたずらっぽく、エミリアは訊ねた。
「ウィルは?どう思ってる?」
ウィルバートは一瞬目を瞬かせたが、当たり前のように答えた。
「俺は、姫と結婚したと思ってますよ?もちろん」
「……そこは『エミリア』と結婚したって言わないと」
エミリアが唇を尖らせれば、ウィルバートは目を細める。
「俺にとっての姫は、貴方だけですから」
エミリアは驚き、彼を見上げる。ウィルバートは優しい笑みを浮かべ、彼女を見つめていた。
「これから先も俺の姫は、エミリアだけです」
エミリアは息を飲んだ。――ずっとずっと、貴方の特別になりたかった。何年も何年も、貴方だけのものになりたかった。
「……ウィルだけの姫?」
「はい」
エミリアは恥ずかしそうに、しかし、嬉しそうに言う。
「それは、最高ね!」
姫は自分だけの騎士に、満面の笑みを見せた。
最初のコメントを投稿しよう!