プロローグ

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プロローグ

 まあ、ようするに長ったらしいタイトルに書かれている通りだ。これから僕が話そうとしてるのは、つまりは、ただそれだけの物語でしかない。別に、そんなことわざわざ僕が言わなくても、タイトルを見た時、あなたは『はいはい。結局、それがきっかけで自殺を思いとどまったって話でしょ』って、きっと皮肉っぽい気持ちの中で、そう思ったはずだ。それに『ってか、こんなこと話してる時点で、おまえ確実に生きてるだろ』って突っ込みを、きっとたくさんの人が、心の中でしたことだろう。  だけど、一つ言わせて欲しい。僕が今、生きてるかどうかについての断定を、この時点ですることは出来ないんだ。だって僕が結局、屋上から飛び降りて、今は地上を彷徨う幽霊としての立場から、あなたに話をしてるって可能性だってあるんだから。でも、まあ、僕としても別にそんなことで、あなたの興味を引きたくもないんだ。だから、そのことについては、ここではっきりと明言しておく。僕は今、生きている。 ──とういうわけでまずは、どこから話していくのがいいんだろう。僕が自殺って結論に至った過程からだろうか? それよりも、どんな風にマドンナに告白されたからかだろうか? まあ、タイトルで触れてしまっている以上、その告白された時のことをあまり先伸ばしにするってのは、どうかなって思う。僕が話しを聞かされる立場だったら、とりあえず、その告白の場面のことから聞かせろよって気持ちになる。だから、まずはその昼休みのことから話そうと思う。思いはするが……しかしここで果たして、このまま感情に流される形で話を始めていいのだろうかと言う疑問が頭に浮かんでしまう。この世界には何事も順序が大切だという道理が存在し、そのことを僕も知ってしまっている。これは、つまり感情と理屈、一体どちらを優先させるべきかという問題であり、僕という人間の性格が優柔不断であることを示す良い例だ。 ──で結局、どこから話し始めればいいの? 僕の気持ちとしては正解が知りたい。でも物事の全てに正解が用意されているわけじゃないってことも分かっているつもり。結局、たしかなこと、何かを保証してくれる都合のいい真実なんて、求めるだけ初めからバカな話なんだよ、きっと──ってことで、僕の結論。突然、彼女に告白された、あの日のことから話を始めよう。
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