ブルー・ノベル

四、友 The Ties Of Friendship

一

花山滝川の伝統と言えば、この第一学年初学期の集団訓練もそのひとつだ。
一泊二日を簡潔に説明すると、ただでさえ山に囲まれた学校から、なにを血迷ったのかさらに山間部へ向けて約三十キロの道のりをひたすら行進することから始まり、辿り着いた施設の体育館で集団行動の隊列訓練をする。夜には揃って学習をしたのち目的のわからないレクリエーションをさせられ就寝、翌朝からふたたび三十キロを歩いて帰ってくるという、特に誰も必要としていない行事である。

クラスが違うためあえかや麻友、道場高志とは掠ることもなく黎は黙々と行きしを歩ききった。厳密に言うと黎のいる理数特進クラスである六ホームは、他のクラスに比べて圧倒的に男子が多い。ゆえにクラス単位で動こうとすると、びっくりするほど華がない。普段黎としてはむしろそれで良いのだが、さすがに三十キロ歩くとなるとBGM程度には黄色い人声が欲しいというものだ。そして暑い。