それは始まり。

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「…ッ、僕に… 何の用ですか」 差し出された携帯をバッと引ったくるように取り返す僕の口から辛うじて出た言葉はコレで、そんな自分の情けなさに小さく舌打ちして目を逸らした。 『おや、心外だね。 ただ、私がキミに会いたかったからというのは… 来た理由にならないのかな?』 この人はいつだってそう…。 いつも、大人の余裕を見せつけて、僕を抗えなくする。 「……ッ垂れ目のくせに目は利くんですね」 腹いせに、嫌みを口にすれば那智さんは肩を竦めた。 『私の目が垂れ目だからって、それは関係ないだろう?いろいろ、知り合いがいるんだよ。…それと、垂れ目なのはキミも同じでしょ?』 自分のことを棚に上げるのは良くないね、と細かいことに突っ込んでくる那智さんに諦め半分、溜め息つく。 「――‥ で、用は何ですか」 『ふぅー、キミはあれだね。いつもツンツンしてるけど、たまには甘えてみるのもいいと思うよ』 やれやれ、と肩を竦めるそのわざとらしさに苛立ちが募る。半眼の目で睨むと、那智さんは溜め息を吐いて、『ちょっとしたジョークなのに…』と零した。
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