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「ううん……そもそも日にちの感覚もなくてね。今日は何日だろう」
「ちょっと……勘弁してくださいよ」
俺の呆れた様子を楽しむようにくすくす笑う。
頭を打っていないことを確認してから体を離してもらい、冷蔵庫に向かってみれば飲み物しか入っていない。というか、これは。
「俺が来た日のまま変わってねえじゃん!」
「いや、そのあと昼に食べに行ったりしてたから、あれから食べてないことはないんだよ」
「当たり前っすよ。あれから何日経ったと思ってんすか。ちょっと待っててください」
急いで部屋を出てから、近くのスーパーに駆け込み、惣菜と野菜、出来合いの飯なんかを放り込んで急いで戻る。
そんなに時間をかけたつもりはないが、帰るとちょうど犬飼は風呂から出てくるところだった。
「やあ、早かったね」
「いや、風呂入る余裕あるなら買い物行ってくださいよ」
「ううん。カナタくんに汚いって思われたくなくてね」
冗談なのか本気なのか分からないことを言うから、俺はもうそれ以上突っ込めない。
とりあえずすぐ食べれそうなものを机に並べていく。
鶏肉の炒め物、海藻サラダ、鮭おにぎりと焼きそば。時間帯のせいかまともな物がほとんど残ってなくて、栄養バランスが取れないのはこの際仕方ないだろう。
野菜を切って青物を、と思ったら包丁がなかった。仕方なくキャベツを手でちぎって塩昆布とごま油をかける。
「犬飼さんって集中してると飯食わなくなるんすか」
「たまにね。元々体についてるからしばらくはいけるかなって思ったんだけどなあ……いただきます」
かろうじてポットは見つけていたのでお吸い物と茶を作れる。しかし食器も少ないからお椀ではなくマグカップに注いだ。
(どんな暮らしだよ)
生活費を節約するために自炊や弁当生活が基本の俺にとってこの家は謎だらけだ。家主がこんなことをいっているのだから仕方ないのだろう。
「トカゲみたいな発想やめてくださいよ……せっかくいい体してんのにそんなことで筋肉落としたら勿体ねえっす」
「君は本当に俺の体が好きなんだね」
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