ねぇ、せんぱい。

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「おい菜月ー!!もうちょっと丁寧に弾けって言ってるだろー!!」 「拓也先輩うるさいですよ!!自分はピアノからっきしなくせに!!」 「弾けねぇけど聴いてんだから多少はわかるっつの!!音大目指してんならもうちょい気合い入れろや!!」 「別に先輩には関係ないじゃないですか!」 「あぁん?中学からの付き合いの先輩になんてこと言うんだ??」 ねぇ、先輩。 なんで、たかが後輩の放課後の自主練に、わざわざ足を運んでくれるんですか。 「別に知り合いたくて知り合ったんじゃないですけど!」 「知り合ったもんは仕方ねぇだろ? 運命なんだよ、う・ん・め・い!」 「そういうこと言わないでくださいよ!気持ち悪いじゃないですか!」 ねぇ、先輩。 なんで、こんな可愛くないことばっかり言う後輩なのに、よくしてくれるんですか。 「いや、運命だね!俺はお前の伴奏でヴァイオリン弾くのが一番好きだからな!」 「いや意味わかんないです、ほかの伴奏者探してくださいよ」 「お前じゃなきゃやってける気しないの!!無理!!」 ねぇ先輩。 なんで、私のピアノが好きだって、一番だなんてそんな堂々と言ってくれるんですか。 ー…ねぇ、先輩。 「ずっと一緒にいるわけじゃないんですから!どうせ卒業しちゃったら…」 『会わなくなる』後輩を。 「あーもー!俺はお前がいいのわかる?!お前が伴奏じゃねぇならコンクールでない!」 「?!ちょっと先輩?!何言ってんですか?!」 「だから!!菜月はピアノやめるんじゃねぇぞ!俺の一生の相棒だから!」 ー…どうせ会わなくなる後輩を、『一生の相棒』だなんて言うんですか。 「…っ、よくそんな恥ずかしいこと言えますね!」 「お?珍しく照れた?可愛いとこもあんじゃん」 ねぇ、先輩。 そうやって触れてくれるのに。 可愛いなんて軽々しく口にするのに。
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