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ほっとしたら、また口の中がじわじわ濡れてきた。思い出した味が広がってきて、喉を鳴らす。
「……もう一回してもいい? 痛くしないから」
「えっ……だ、だめっ!」
「何で?」
「あ、あんなこと、されたらっ……頭の中、真白でいっぱいになっちゃうもんっ……」
「……なっちゃえばいいじゃん」
りっちゃんの頭の後ろ押さえつけて、僕はまた、りっちゃんの口に触った。自分の口で。
「んっ……!」
ぶるぶるした弱い手がシャツにしがみついてきた途端、お腹の底がぞわぞわして、また狭い口の中で遊ぶ。
壊される。わかってるのに、やめられない。
だって、気づいた。
僕でいっぱいにしちゃえばいいんだって。律を入れる隙間がないくらい、りっちゃんの中、僕で埋めちゃえばいいんだって。そしたら律が汚されなくて済む。僕が、律を、守ってあげられる。
噛みちぎったら、どんなものがあふれ出してくるんだろう。何回も想像しながら、ぎこちない舌をゆっくり何回も味わう。
ちっとも甘くない。甘くないから、蜜じゃない。これはきっと、蜜になるのに失敗した毒。触った先から狂わせる、危険な毒。
こんなもの、いつまでも律の傍にあっちゃいけない。律も、他の誰も、知っちゃいけない。
支えてた頭が手に寄りかかってきて、いつの間にか口を離してた。
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