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理性と欲望の天秤
家の留守を丸一日預かる。
そういったことは、家族と暮らしていてたまに起こることだろう。それは伊藤智孝にも言えたことであり、彼は妹と二人で二日間を過ごすことになった。
しかしこの妹、兄に家事をやらせるどころか、揉め事の種を蒔き散らかし困った顔を見るのが好きという変な趣味を持っていた。
「有羽、面白いゲーム買ったの。一緒に遊ばない?」そう言って智孝の彼女を招き入れたのだった。
昼前から部屋にこもったきりだった有羽たちだが、智孝が夕飯の仕度をし始めた頃、有羽だけが台所に顔を出した。
「兄ちゃん、何か手伝うことない?」
「んー、特にないな」
少し考えて智孝が答えると、有羽は残念そうな声を上げながらおずおずと近寄った。そして調理中である鍋を覗く。
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