◎第10章 アブラハムの幕舎

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 余りにおかしくなって、お腹を抱えて痙攣してしまいます。悲しみに染まっていた瞳の水も、身体の震えに応えて飛び散ってしまいました。 「いえ、失礼しました。私はとうの昔に、既に普通の生活を送る権利を失っていたんですね。」  ならば、もはや躊躇うことなどない。 「私は、あなたの言うようにその指示に従って父を殺したのでしょう。それから最近、殿下の指示に従って、宇都宮くんを殺めました。」  私は殿下の監督のもと、ずっと人殺しの罪を犯すことから逃れてきたものだとばかり思い込んでいました。  それがあの日、殿下の指示に従って宇都宮くんを亡き者にした瞬間、ついに人道を侵してしまったと考えていた。 でも、それは違っていた。
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