「恋」短編コンテスト第2回「先輩」

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「か」 「ん?」 「可愛く」 「可愛く?」 じり、と先輩が近づいてくる。 後ろに下がる場所なんて、いくらでもあるのに、離れたくても、離れられない。 「可愛く、ない」 「もう一回」 「…可愛くない!」 バッ、と先輩の手を振り払い、その勢いのまま横を向きながら言えば「そうだな」と先輩が優しい声で答える。 「可愛いのは、俺じゃなくて」 「んぐ」 むぎゅ、と両頬が、先輩の手に挟まれる。 「みゆきちのほうが可愛いんだけど」 ニカッ、と笑う笑顔は、可愛いよりも、格好良くて。 ぶあっ、と頬に熱が一気に集まってくる。 「まぁ、でもその可愛さは」 他には、見せないけどな、と笑った先輩の顔は、やっぱり、格好良い。 先輩は可愛い。 これは、皆が知ってること。 けれど、やっぱり。 先輩は、可愛いよりも、格好良い。 だって、そうでなければ、私の心臓はこんなにも煩く、騒ぐはずがないのだ。 「先輩」 「ん?」 「やっぱり、先輩は、格好良いです」 そう伝えた私に、「今さら気づいたか」と、先輩は嬉しそうに、笑った。
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