白い手

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「桜の木の下でゾンビ映画? それなら透けた真っ白な手の方が雰囲気が出ると思うけど」 「ひっ……!」 「足首に生温い感触。視線に気が付いたかのように、すーっと土の下に消えて行く透けた白い手。家に帰って足首を確認すると……」 「もういい! もういい!」  勢い良く首を横に振る拓実にくすりと笑って、 「……」 「何!?」  シャベルの先に触れた感触に手を止める。拓実は何を想像したか。慌てて穴から飛び出すと、恐る恐ると言った様子でのぞき込んできた。  それを鼻で笑って、慎重にシャベルで土を除けていく。 「ボストンバッグだね」  土の中から現れた黒い布。シャベルから伝わった感触は固かった。このバッグの中に、それが入っているのだろう。 「死体!? 人骨!?」 「さぁ、なんだろうね。開けてみたらわかるでしょ。これ、穴から出すのを手伝って」  ふるふると首を横に振る拓実にため息をついて、一人で持ち上げようとして、 「……っ」  固まる。バッグの上に残っている土や足場が悪いこともあるが、思っていたよりも重い。 「しゃーないなぁ。ほら、出ろよ」  拓実が差し出した手につかまって穴を出る。交代で拓実が穴に下りた。ボストンバッグの取っ手をつかむのに躊躇いながらも、拓実は軽々とバッグを持ち上げて穴の外に放り出した。     
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