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鳥の戯れが朝を告げる、日曜日。
ぼんやりと夢の終わりを悟りながら、目を閉じたまま余韻を味わう。
なんていい夢だったのだろう。
しかも、とてもリアルだった。
自然と口元に笑みがこぼれる。
もし今、目を開けて、隣で彼女がまどろんでいたらどんなに幸福なことか。
そんなことは絶対にありえないと分かっているけれど。
それでも、期待せずにはいられないほどにリアルな夢だったのだ。
[ビーッ、ビーッ、ビーッ]
無機質なバイブレーションが俺を無理やり夢から引きずり出そうとする。
それでも最後の抵抗のつもりで、目を瞑ったままスマホをまさぐった。
適当に画面をスライドして耳元にスマホを押し当てる。
「…もしもし。」
『もしもし、景?』
耳元から聞こえてきたよく通る声で、俺は一気に覚醒した。
画面には、さっき夢の中で一緒ににいた相手の名が確かに表示されていた。
まさか、そんなことって…
俺は激しく動揺していた。
しかしそれを電話越しの相手に悟られないように、注意深く言葉を紡いだ。
「…もしもし、杏奈?」
『その眠たそうな声…さては、まだ寝てたな?もう10時だよ?』
快活な声に言い当てられてドキリとする。
もし、さっきまで杏奈の夢を見ていた、といえばどんな反応をするんだろう。
勿論そんなこと夢でも聞けないけれど。
「まだ10時だろ。」
電話口からやれやれといったようにため息が聞こえてきた。
『こんな気持ちのいい日にまだ寝てるとかありえないって。
てなわけで、買い物付き合って。』
「…昼からならいいけど。」
『しょうがないな、そうしてあげるよ。』
「俺が杏奈の買い物に付き合うんだよな?」
俺の返事をものともせず、杏奈は軽やかに通話を切ってしまった。
ツー、ツーと無機質につぶやくスマートフォンを握りしめ、思わずため息がこぼれた。
びっくりした…
まさか、さっきのは予知夢だったのだろうか。
こんなことがあるなんて。
しばらくそのままぼんやりとしていたが、慌ててベットから飛び出した。
しまった…
何を着ていけばいいんだろう。
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