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心配のしすぎだ、とシェイドが微笑むが、今のルーヴは存外余裕がなかった。
全て杞憂に終わればいい。
いつものような、過保護な使い魔で済めばいい。
それならどれほど気が楽だったことか。
ルーヴはやや語気を強めた。
「お前が今置かれている状況をよく考えるんだ。
今頃レボリスは、お前を捕まえようと躍起になっているに違いない。紫眼の魔導師である事はとっくに言い広まっているはずだ。
レボリス国内だけで治まればいいが、隣国から大陸中へ話が広まったらどうなる?
ーーお前が安心して過ごせる場所はなくなってしまうんだぞ」
国を相手取って、一人と一匹で対抗できるとはシェイドもルーヴも勿論思っていない。
個人の力ではシェイドの右に出るものはいないだろうが、個が集結して襲来すれば、いかにシェイドであろうとただでは済まないだろう。
だから早く眼を治して、森に帰らなければならない。
それが最優先なのだが、
「どれだけ敵が増えても、目の前で苦しんでいる人たちを放置できない。
アシュレイなら、きっと俺と同じようにイラの人たちを助けるよ」
「お前は、いい加減にーー」
なおもルーヴが言い募ろうとしたが、両者は何か気配を感じ取り、同時に後方へ顔を向けた。
雑木林の中に、何かいる。
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