第5章

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 心配のしすぎだ、とシェイドが微笑むが、今のルーヴは存外余裕がなかった。  全て杞憂に終わればいい。  いつものような、過保護な使い魔で済めばいい。  それならどれほど気が楽だったことか。  ルーヴはやや語気を強めた。 「お前が今置かれている状況をよく考えるんだ。  今頃レボリスは、お前を捕まえようと躍起(やっき)になっているに違いない。紫眼の魔導師である事はとっくに言い広まっているはずだ。  レボリス国内だけで治まればいいが、隣国から大陸中へ話が広まったらどうなる?  ーーお前が安心して過ごせる場所はなくなってしまうんだぞ」  国を相手取って、一人と一匹で対抗できるとはシェイドもルーヴも勿論思っていない。  個人の力ではシェイドの右に出るものはいないだろうが、個が集結して襲来すれば、いかにシェイドであろうとただでは済まないだろう。  だから早く眼を治して、森に帰らなければならない。  それが最優先なのだが、 「どれだけ敵が増えても、目の前で苦しんでいる人たちを放置できない。  アシュレイなら、きっと俺と同じようにイラの人たちを助けるよ」 「お前は、いい加減にーー」  なおもルーヴが言い募ろうとしたが、両者は何か気配を感じ取り、同時に後方へ顔を向けた。  雑木林の中に、何かいる。
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