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商店街の神様
次に茜とごんたが立ち寄ったのは、商店街にある小さな稲荷神社だった。
ごんたが、探し物ならあいつらに聞けばいい、と茜を連れてきたのだ。
神社は古いけれど、商店街の組合の人達によって定期的に清掃されているようで、寂れてはいなかった。
あー、この神社も、昔はお姉ちゃんとよく来たな。駄菓子屋さんでお菓子買って、ここで食べたっけ。
茜は中学くらいからもうずっと訪れていなかった神社を眺め、懐かしい気持ちになった。
「それで、あいつらに聞けばって言ってたけど、ここに誰がいるの?」
ごんたはバカにしたような目を向ける。
「ここに誰がいるかって、決まってるだろ?狐だよ」
「…は?」
今日の茜は驚いてばかりだ。口を開けて、また固まってしまった。
この町って、狐が出るほど田舎だったの…?
ショックを受けている様子の茜を無視して、ごんたは声をあげた。
「おーい、狐の。いるんだろ?ちょっと聞きたいことがあるんだが」
すると、神社の賽銭箱の裏から、本当に狐が現れた。
本当にいた!狐とか、生で初めて見た!
茜は狐の登場に目を見張った。
「ごんたさんじゃないですか。何です?こんな昼間からあなたが出歩いているなんて、珍しい」
狐はひょい、とごんたの側に近づくと、茜にも気づいた様子で立ち止まった。
「狐の。実はな、こいつが財布を無くしちまったんだと。連れ回されて困ってんだ。何とかならねぇか」
茜はこのやりとりの間もずっと固まっていたが、その言葉に目的を思い出し、はっとする。
「そ、そうなんです。困ってたら、紅さんが魔法で動物さんと喋れるようにしてくれたんだけど、狐さんは知りませんか?」
狐は、ゆっくりと首を傾げた。
「財布と言われましても、こちらも今少々困ったことになっておりまして」
「お前、神様のしたっぱなんだろ?何かわかんねぇのかよ」
「神様?!」
茜は驚いて、狐をまじまじと見つめた。どう見ても、ただの狐だった。
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