199人が本棚に入れています
本棚に追加
/259ページ
☆
「という感じでして、知らなかったです」
「なんだか騙したみたいで心苦しいな。でも、シャルムの母親はちゃんと了承していたぞ」
「ああ。母に聞いてみても、良いところだから、と一点張りでして」
「そうか。とりあえず鍵を渡しておくよ」
ルダーは職場の鍵をシャルムに渡した。
「ここはお前専用の職場みたいなものだ。改築しても良いかもな。とにかく入ってみなよ」
「はい」
シャルムは鍵をドアノブにさしこみ、捻る。扉が開いた。
中は、殺風景だった。部屋は大きく二つ。職場用とプライベート用だ。職場用の部屋には棚が隅に二つあるだけで、他には特にない。
プライベート用も大して変わらない。クローゼットとテーブルが追加されているくらいで、あとは必要最低限の設備があるだけだ。
「まあ、出来立てならこんなもんだろ」
「そうですね」
「よし。じゃあ、街を案内するから。そのために俺が来たわけだしな」
「ありがとうございます」
「いえいえ。ようこそ。船の街、オールラント号へ」
最初のコメントを投稿しよう!