第0章 プロローグ

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 高校2年の春、一瞬で君に恋をした。  長い黒髪に目を奪われ、君の性格に心を奪われた。  強気な所も、意外に泣き虫な所も、知れば知るほど全てが愛しく、一生大切にすると決めた。 ---アナタ。  結婚してそう呼ばれるようになって、夫婦になったんだと実感した。 ---パパ。  そう呼ばれて父親になったんだと実感した。  生まれたばかりの我が子を抱く彼女は、もう立派な母親になっていた。  そんな姿を残したくて、買ったばかりのビデオカメラを震える手で持ち、汗ばむ指先でONにして、高校時代から何も変わらない彼女と、そして、必死で産声を上げる我が子を涙する瞳で見詰め、記録する。  俺の宝物。  ずっと変わらない俺の宝物。
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