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 私は、まだわけがわからなくて、沢村さんを見上げていた。 「そこまで驚くか?」  沢村さんが腕組みをした。 「まあ、ええわ。会計してくっし、ここにおってな」  会計へ向かう沢村さんの後ろ姿を、眺める。服装がラフなだけでなく、動きが軽やかだ。  レジの列に並んでいる。出口はレジの向こうなので、私もそちらへ移動した。  私はレジからほんの少し離れた書棚の脇に立った。料理や収納関連の文字が目に入る。沢村さんの様子をうかがう。次にはお会計という時に、私に気づいて、笑った。  子供っぽい表情に、私はまた戸惑った。 「飯はすんでんねやろ」  会計を終えた沢村さんが私に訊ねる。  頷いた。「出よ」と声をかけられ、下りのエスカレーターにのった。  前に立つ沢村さんが、振り向いた。エスカレータの段差が身長差をだいぶ埋めるから、顔が近い。ただでさえはやい鼓動がさらにはやまる。 「こっからどうしよ。昨日の話も聞きたいしなあ」  外に出る。沢村さんが立ち止まって、腕組みをした。  考え込んでいる。突然私を見た。 「考えんの邪魔くさいわ。徒歩圏内やし、俺んちでええな」  沢村さんは私のこたえを待たずに「こっちやで」と歩き始めた。とにかくついて行く。 「今日は、輪をかけて大人しいな」  沢村さんに言われた。私は、そう大人しい方でもないと思っている。半分パニックに陥ってるせいで、言葉が出てこないだけだ。  眼鏡をかけていないけれど、確かに同じ顔をしているし、服装はまったくテイストが違うけれど、背格好は同じだ。  それなのに、目の前にいる人が、沢村さんだと信じ切れなかった。  少女漫画でありがちな『白王子』『黒王子』と呼ばれる性質の違う双子キャラ並みに違う。
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