2人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
【突然の決意】
ドアを開けて目に飛び込んできたものに驚いた。
「沙世が先にいる」
9割の確率で私が先にここ『カウンセリングルーム』に来る。今日は珍しい1割の日だったよう。沙世は制服のネクタイを緩め、棒キャンディーを舐めていた。
「小町が遅いんじゃん?ダメだよ時間は守らないと」
「まだチャイムまで5分ありますー」
杉浦沙世、百瀬小町、私たちは教室で授業を受けない。いつもここで課題をこなして出席扱いを受けている。教室に行けない理由はまあ、うん・・・。
「あら、杉浦さん早い」
最後に来たのは優しい顔立ちのカウンセラーの大井先生。私たちの担任のようなものだ。その大井先生まで沙世の登校時間に驚いている。それがなんだか面白くて私は笑っていた。
「早いのは感心するけど飴はダメよ」
「これがないと生きていけないんです。糖分足りないと頭も働かず、課題もこなせない」
「変なこと言ってもダメ」
するとしぶしぶキャンディーを捨ててそのまま沙世は大井先生の机の前に立った。いつもダルそうな立ち方するのになぜか背筋を伸ばしている。大井先生もどうしたの?と聞く。すると。
「今日から教室行くよ、もうここで勉強はしない」
最初のコメントを投稿しよう!