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早朝、あるマンションの一室で携帯のアラームが大きく鳴り響いた。
朝日に照らされたベッドの毛布が少しづつ動き出す。
毛布の端から白い手が伸びて、携帯のアラームが止まった。
白い手はそのまま毛布をめくり上げ、自分の目を擦り始めた。
ベッドの反対側には男が毛布から顔を出し、大きくあくびをかいた。
俊夫「ん・・・・・今何時?」
陽菜子は、アラームがなった携帯を覗き込んだ。
陽菜子「・・・・・6時半。」
俊夫は大きくため息をついた。
俊夫「早えな・・・・もう行くの?」
陽菜子は起き上がり、下着姿で自分の服を集め始めた。
俊夫「ねえ、もうちょっと居てよ。」
陽菜子「ゴメン、一旦帰りたいから、ここから家までどのくらいかかるかわかんないし、」
陽菜子はブラウスのボタンを留めながらテレビのリモコンを探した。
俊夫「ここから会社までだったら、40分で着くよ、一緒に行こ。」
陽菜子「嫌よ、帰って化粧直したいし、一緒に行ったらすぐ噂になるでしょ。」
俊夫はベッドから起き上がり、急いで着替えをしている陽菜子を眺めていた。
俊夫「駅に着いたら時間差で出勤すればいいじゃんか、」
陽菜子はリモコンのスイッチを押して、ニュースのチャンネルに合わせた。
陽菜子「何処で誰が見てるかわかんないでしょ?」
陽菜子はスーツのジャケットを羽織って、俊夫のいるベッドに近寄った。
陽菜子「それに、彼女が会社で待ってるんでしょ?」
俊夫「大丈夫、もう冷え切ってるからさ、だから、前から気になってた佐田さんのことを誘ったんだよ、」
陽菜子は笑顔を見せてベッドに腰を掛けた。
陽菜子「ありがとう、誘ってくれて、でも今日は帰らせて、また連絡するから・・・」
陽菜子は俊夫の唇に顔を近づけた。
「・・・・・えー、ここで速報が入りました、速報です。」
陽菜子と俊夫はテレビに顔を向けた。
「ただいま入った情報によりますと、都内で護送中の容疑者が逃走したようです。繰り返します、護送中の容疑者が逃走したようです。」
俊夫はリモコンの音量を上げた。
「ここで中継が繋がったようです、長原さん、レポーターの長原さん?」
画面はスタジオから、都内の大通りに切り替わった。
「はい、こちら中継です・・・・」
陽菜子「あれ?ここ・・・」
俊夫「どうした?」
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