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どうにかその熱いキスに応えたくて、必死に彼のシャツを掴んだ。
一体、何秒キスを交わしていたのだろう。
ふと瀬名さんの唇が離れ、互いの額がぶつかるほどの距離で彼が囁いた。
「今日はこの辺でやめておくよ。これ以上キスしたら、さすがに抑えられなくなりそうだから」
「……っ」
「本当は、まだ全然足りないけどね」
私、今どんな顔をしてるだろう。
きっと笑ってしまうくらい真っ赤になっているに違いない。
「僕の恋人になって下さい。絶対に、後悔させないから」
「……っ、はい……っ」
初めて、恋をした。
初めて、好きだって伝えた。
初めて、幸せになりたいと願った。
初めて、人に好きになってもらえた。
初めて、想いが通じることの喜びを知った。
全てを諦めかけていた自分に舞い降りた奇跡。
この日の記憶が、重く暗い過去を塗り潰してくれる。
そんな気がして、また懲りもせず泣いてしまったんだ。
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