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瀬名さんの喜ぶ顔も、私に向けてくれる笑顔も、全部私だけが知っていたい。
他の人に見られたくないから、家で二人きりでお祝いしたいなんて……高級ディナーをねだることよりもワガママかもしれない。
……私、いつからこんなに独占欲が強くなったのかな。
「じゃあ、誕生日の前日は俺と夏がお祝いするから、家においで。いつものようにパーティーしよう」
「今年もお祝いしてくれるの……?」
「当たり前だろ!一緒に住んでなくたって、家族は家族なんだから」
「……柊ちゃん、ありがとう。楽しみにしてるね」
思わず泣きそうになるのをグッと堪えた。
最近、昔よりずいぶん涙もろくなってしまった気がする。
昔は、どれだけ辛くても、うまく泣けなかったのに。
苦しくても、苦しいなんて言えなかったのに。
今は、昔よりも自分の気持ちに素直になれている。
「帰り、気をつけろよ。走って転ばないようにな」
「うん、また明日ね」
帰り支度を整えた私は、少し浮かれた気分のまま、瀬名さんが待っている家までの道を早足で駆け抜けた。
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