消えない心の傷

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「柊一朗、あんたやっぱりいい男だわ」 「俺に惚れ直したか?」 「惚れ直した!」 柊ちゃんは自分で惚れ直したか聞いたくせに、なっちゃんが素直に認めると恥ずかしそうに顔を背けた。 シャイなところは、昔から何も変わっていない。 でも私は、そんな柊ちゃんが大好きなんだ。 「やべ!味付け失敗した!」 「もう、何やってんのよ……張り切らないで望愛に作ってもらえば良かったのに」 「今日は俺が作りたい気分だったんだよ」 柊ちゃんとなっちゃんが言い合う声さえ、心地よく感じてしまう。 今まで私は、ずっと二人に守られて生きてきた。 二人から離れて生きていく自分なんて、昔なら考えられなかった。 全ては、瀬名さんとの出会いから変わった。 私が東京に行くと言ったら、きっと瀬名さんは心から喜んでくれるだろう。 その笑顔を想像しただけで、心が満たされていくのを感じた。
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