決別の涙

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「……もう二度と、離れないで」 耳元で囁かれた言葉が胸に突き刺さる。 私はどれだけ瀬名さんを悲しませてしまったのだろう。 心に残ったものは、後悔しかない。 私はその震える体をきつく抱きしめ返した。 「……もう二度と、離れません。いつか瀬名さんが私に飽きて、離れてほしいって言われても、絶対に離れませんから」 私がそう言うと、瀬名さんが小さく笑う声が耳に響いた。 「僕が望愛に飽きることはないけどね」 するとそこで、なっちゃんとの電話を終えた柊ちゃんが戻ってきたため、私は瀬名さんから密着していた体を離した。 「ちょ、こんな公共の場で抱き合うとか良くないぞ!誰に見られてるかわからないんだからな」 「でも柊さん、さっき思いきり望愛と抱き合ってましたよね。だったら、僕もいいんじゃないですか?」 「俺のはいいんだよ。瀬名くんのは下心満載だからダメ」 瀬名さんと柊ちゃんが言い合う光景を眺めながら、大切な人たちのそばにいられる幸せを噛みしめる。 何があっても、もう現実から逃げないと心に誓った。
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