恋に溺れる感覚

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この日僕は、秘書の葛城から指摘されるほどに上機嫌だった。 別にいつも不機嫌なわけではない。 今日は望愛を僕と関わりのある人々に紹介するパーティーが催されるのだ。 挙式は既に海外で済ませている。 今日のパーティーは、披露宴ほど大規模なものではないが、ほとんど披露宴のようなものになるだろう。 「副社長。はっきり言わせて頂きますが、そこまで浮かれていると気味が悪いです。普段の威厳をお忘れずに」 「威厳なんか、今日は必要ないだろ」 「多くの社員や取引先の方々が集まりますので、むしろ普段よりも必要です」 「わかったよ。なるべく、いつも通りを心がけるから」 秘書の葛城は、上司である僕に対して一切の遠慮がない。 その方がこちらも遠慮なく接することが出来るため問題はないが、たまに小姑のような葛城を疎ましく思うこともある。 けれど、僕にとっては大事な存在だ。 「望愛は?」 「そろそろ支度を終えられる頃かと思いますが」 ちょうど望愛の話をしていたタイミングで、部屋の扉がノックされ純白のドレスに身を包んだ彼女が現れた。 プリンセスラインのウェディングドレスとは違い、シックなデザインのドレスも華奢な彼女の身体にはよく似合っている。
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