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けれどそれから数日が経ったある日の夜。
仕事を終えて帰宅した彼女から突然、次の休日に専門学校のオープンキャンパスに行きたいと思っていると告げられた。
直感で、すぐにあの彼が関わっているのだと感じた。
きっと僕の表情はわかりやすく曇ってしまったと思う。
「柊ちゃんも一緒に行ってくれるみたいなので……」
本来なら躊躇せずに、行っておいでと言うべき場面だ。
でも僕は、心配で仕方なかった。
学校のオープンキャンパスなんて、人混みが苦手な彼女にとっては、ある意味試練の場のような気がしたのだ。
「……柊さんが一緒なら、大丈夫か。でも望愛、ずいぶん彼と親しくなったんだね」
「そんなことはないと思いますけど……でも、今までずっと厨房では一人で仕事してたんで、少し心強いです」
「心強い、か。……正直、あんまり聞きたくなかったな」
僕は勝手だ。
自分は仕事で散々女性と関わってきているのに、彼女がたった一人の男の存在を心強いと言っただけで、嫉妬している。
「望愛は少し鈍いから、心配だよ。親しくなるのはいいけど、気は許し過ぎないようにね」
「は、はい……」
「じゃあ僕は部屋に戻ってもう少し仕事するかな。明後日、楽しんで来て。おやすみ」
自分の寝室へ戻り、深く息を吐いた。
彼女が変わっていくことを、本当は心のどこかで恐れている自分がいることに気付いてしまっていた。
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