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「はい、神原くん」
その頃と全く変わらない柔らかな笑顔のまま新しい名刺を渡された。
社名と部署名と名前が印刷された普通の名刺には『MIHARU KANBARA』と俺の要望通りアルファベット表記があった。
「ちゃんとアルファベット表記入れてくれたんですね」
「確かに最近はネットサービス中心の外資が増えてるからね。神原くんの着眼はありがたいよ」
それ以上会話は続かなくて、総務課の夷藤さんは定時きっかりに「じゃあ、」と他の総務課員に挨拶をして去っていった。
入社からかれこれ二年。
仕事も軌道に乗ってきて、大手の重役がラインのグルチャに俺の名前入れてくれてるような人脈を有していても尚、個人的な呑みのひとつも乗ってきてくれないのは残すところ夷藤さんのみとなった。
甘いものも嫌いじゃないどころか好きな方だから女性社員とはスイーツ会にも行く。女の子の情報網は凄い。ちょっとイケメンなら他社の社員でも誕生日にチェック入れてる。
それを入手することは人脈を広げるのに役立つ。
理想は、広く、信頼を得られる程度には深く、の人間関係。
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